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フリーランスフリーラン

とくにないです

バッドエンド

-A
先生…僕はもう生きている事になんの希望も見出せません…今この瞬間も原因不明の焦燥感に襲われて胸が張り裂けそうなんです…

 

-B
うんうん、そうだね。君の精神疾患は長年慢性化してはいたけれどここにきてまた一つ突き抜けたね。ずっと治療を続けてきたけれどまさかこのタイミングで天井を突き破るとは先生夢にも思わなかったよ。

 

-A
すみません…先生の手を煩わせてしまうなんて僕はなんて最低な人間なんだ…

 

-B
まぁそう自分を卑下しない事だよ。それが先生のお仕事だから気にしないでも大丈夫。だけれど現代医学で君の精神疾患を治療する事は難しいと見て新たな治療方法を試みる事にしたよ。テストケースとしての導入だから効果は未知数だけれど何もしないよりは遥かにマシだと思うよ。

 

-A
ありがとうございます…どんな治療法なのでしょうか?

 

-B
アニマルセラピーって知ってる?動物を使ったセラピー手法で動物と触れ合う事で心が落ち着いたりストレスが軽減する等の癒し効果があるとして昨今注目を浴びているとかいないとか。

 

-A
知ってる!イルカと泳いだりするやつだ!イルカと泳ぎたい!

 

-B
お?動物と聞くや否や声に張りが出たじゃないか、このお調子者め。以前の問診で「動物好き」と聞いていたからもしかしたらと思ったけれど、これは効果が期待できそうだなぁ。

 

-A
僕の事をきちんと考えてくれるのは先生だけです…ありがとうございます先生…

 

-B
お礼を言うのは治療が終わってからだよ。それでは早速だけれど治療を開始しようか。ちょっと準備を始めるね。

 

-A
え?ここで?と言う事はイルカではなさそうですね。なんだろう犬とか猫とかかな?うちは家族がアレルギー持ちでペットを飼った事がないからそれでも充分に嬉しいですけど。

 

-B
はい、これ。

 

-A
はい。はい…?なんでしょうこれは?貝…ですか?

 

-B
シジミだよ。知ってる?シジミ。犬とか猫は世話が大変だし、イルカなんかはもう問題外。昆虫は世話はともかくとして短命だから微妙だし、そう考えると世話が簡単でそれなりに寿命も長い(7~8年)シジミだけが候補として残ったって訳。どう?癒されそう?ストレス緩和できてる?

 

-A
…いや、食材じゃないですか。「ストレス緩和できてる?」じゃないですよ。できてませんよ。ご覧の通り加速していますよ。アニマルセラピーって哺乳類が多いんじゃないですか?シジミだけが最終選考に残るってどんな選手層の薄さですか。

 

-B
言いたい事はわかるよ。ゴリラだろう?ゴリラが良かったんだろう?先生もそう思ったから八方手を尽くしたよ?だけれどワシントン条約が…くそっ!条約さえなければ!

 

-A
無理ですよ。絶対八方手を尽くしてないじゃないですか。別にゴリラが良いとも言ってませんよ。条約のせいにしないでくださいよ。条約がなくてもゴリラは嫌ですよ。捻り殺されますよ。

 

-B
君、ゴリラの優しさと賢さを知らないな?手話が出来る奇跡のゴリラ「ココ」は人間との意思疎通もできるし、手話を通じて子猫を欲しがり、実際にプレゼントされた子猫を我が子のように可愛がったそうだよ。それが切欠で人間とゴリラの関係も更に深まったとか。

 

-A
じゃあもうそれはゴリラに対するアニマルセラピーの話じゃないですか。ゴリラだって子猫の変わりにシジミを与えられたら怒りますよ。反乱が怒りますよ。

 

-B
猿の惑星のように?馬鹿だな君は、あれは映画の世界の話だ。幾ら人とゴリラが共通祖先を持ち極めて近しい存在にあると言ってもゴリラが知性を持って反乱と言えるような抵抗を見せる等と言う事はない!ナンセンスだ!君はゴリラの何を知っている?!シジミを与えられて喜ぶゴリラもいるかもしれないじゃないか!大体君はなんだ!文句ばかり!先生に歯向かう事ばかりで!

 

-A
限界だ!薬を!

 

-B
何?!やめろ!先生は薬など求めていない!薬害によるリスクを軽視し…

 

-A
眠ったか。今回は大分安定していたように見えたが。あと給仕の際は充分に注意を。今回はシジミだったからまだ良かったが何か凶器に変わるものだったら大変な事になっていたよ。この治療方針は患者の症状を加速させる危険性がありそうだ。しばらくは投薬メインの治療に切り替える事にしよう。

 

バッドエンド。