フリーランスフリーラン

とくにないです

美人は正露丸の夢を見るか?

カフェに凄い美人がいるのだけれど死ぬほど正露丸臭いんです。ここまでの正露丸臭さは正露丸を主食にしているか、出掛けに粉砕した正露丸を全身に振りかけないと出せないと思うんです。なんだ。その美貌を手に入れるための代償がそれなのか。喰っているのか。正露丸依存症なのか。そのコーヒーに入っているのは正露丸なのか。おえっ!

 

臭い。めっちゃ臭い。やばい。

 

僕は店内に人が少ない時に入店したから臭いの元が美人だとわかっているけれど、後から入店した人は原因が突き止められず、訝しげな表情を浮かべて辺りを見回しているんです。視線の先には美人with僕。

 

わかる。普通に考えたら美人が正露丸臭い訳ないし、薄毛でアホ面浮かべたおっさんが犯人だと思いますよね。でも違うんです!この人!この人なんですぅ!美人だけどすんげー正露丸臭いんですぅ!外見だけ見ればパーフェクトヒューマンなのに正露丸臭いって言うかもう正露丸そのものと言っても良いレベルなんですぅ!

 

あー、他の人がめっちゃこちらを見ている。

 

完全に「薄毛の癖に正露丸までキメやがって何様だ」って顔してますね。ちょっと待って欲しい。薄毛にも正露丸を飲む権利はある。権利はあるけど行使したことはないんですよ。正露丸なんて小学生の時以来飲んでないんですよ。臭いから。あの臭いが本当に苦手で『ラッパのマークの正露丸なんて謳っていますけれども、ラッパからラッパーに至るまで嫌いになるほどに正露丸が苦手なんですよ。

 

女性自身は清楚な雰囲気を醸し出したおっとり系の美人で、綾瀬はるか深田恭子を足したような外見をしていらっしゃるんですね。おまけに長身だしスタイルも良い。多分めちゃくちゃモテるし、僕なんかは一生縁のない存在なのでしょう。

 

でも臭い。全く慣れない。普通の正露丸でここまでの正露丸臭を出せるとは思えない。正露丸正露丸糖衣Aを同時に服用したとしてもここまでの正露丸らしさは出せないと思う。他者の追随を許さない不撓不屈の正露丸の臭いがする。突き抜けてる。自然界ならば恐らく敵なしだし、密室ならば同席した人間は即座に死ぬ。ナイトオブホワイトドラゴンを生贄に、手札からブルーアイズホワイトドラゴンを特殊召喚!ターンエンド!ブルーアイズホワイトドラゴンは即座に死ぬ。それほどに臭い。

 

例え見た目が綾瀬はるか深田恭子を足したものだとしてもここまでのネガティブ要素があったらモテないのかもしれません。よく表情を伺ってみると憂いを帯びているような気もします。「はぁ…昨日の合コンも散々だったな…やっぱり正露丸を主食にしているのが悪いのかな…でも正露丸をやめるなんてことは絶対にあり得ないし…そのうち正露丸も含めて私のことを愛してくれる人が見つかるはず…」なのか。そしてそれは僕なのか。

 

果たして彼女と婚姻関係を結んだとして僕は正露丸を許容できるのでしょうか。

 

契約企業との打ち合わせを終えて帰宅した僕に「あなたおかえりなさい。先に食事にしますか?それともお風呂?それとも正露丸?」の三択を迫られたとして僕は正露丸を選ぶことができるのでしょうか。

 

ちなみに食事の調味料には正露丸が加えられているし、お風呂もバブだと思ったら正露丸を粉砕し再度形成し直したものが放り込まれています。それらの苦行を乗り越えてベッドインしたとしても嫁は正露丸臭い。事を終えたとしても一晩中正露丸の臭いに包まれて眠ることになる。胃腸の調子はすこぶる良いけれど、内外からの正露丸臭に支配されて、やがて正露丸は僕のアイデンティティとなる。正露丸なしでは生きていけない身体になって正露丸を自分から欲するようになる。

 

「ふふふ、計画通りね」

 

虚ろな表情で虚空を見つめ、正露丸を求める僕を見て彼女は薄く笑う。僕の意識は精神の奥に閉じ込められて、その欲求を抑えようにも抑えられないのでやがて考えるのをやめた。